山梨県増穂町平林棚田の農業体験記

野田知子(練馬区上石神井在住)

 棚田の米が、昨日送られてきました。 白く輝いて、いい香りのする新米は、なによりのご馳走です。 しかも、自分たちで、田植え・稲刈りをおこなった米、と思う と、それだけで、最高においしく感じました。

 私たちは2家族(50歳代の大人3人と20歳代の娘達ふたり) で、1枚の棚田の田植え・稲刈りをしました。 田植えは、前日に赤石温泉に一泊して、稲刈りは日帰りでした。 稲刈りの日は、正面に富士山が見え、壮快な気分になりました。 娘達は、小さい頃から自然の中での活動を多く経験していまし たが、田植えは初めてで、「いいね」を連発。 棚田の田植え・稲刈りは、都会で暮らす人間にとって、癒し効 果抜群でした。

 ただ、せっかくの農業体験が、すべて農家の方々の手で準備が され、最後のおいしい部分だけの体験を2~3時間するだけの 「お客様」扱いでしたので、農業体験というよりも、観光のイ ベントとしての農業体験、という感じがしました。

 温泉に、いつもの家族だけで泊まるより、農家に民泊し、農家 のたたずまいの中で、農家の方々と語らうこと、おいしくいた だいたエゴマのおはぎも一緒に作るなど、農家の方々との丸ご とのおつきあいが出来ると、もっと農業のことに興味を持ち、 農業の大切さ、大変さがわかるのではないかと思います。

 そして、そのためには、いくつものハードルがあるかと思います。 それを越えることで、農業者と都会の人間がより近づくことが 出来るのではそのことが日本の農業を支える力になるのでは、 と思います。

 私は、昨年、農業体験を組み込んだ修学旅行(秋田県田沢湖町 など)に同行し、帰りのバスや新幹線の中でインタビュー調査 をしました。 その時の農業体験は、朝から夕食後の団らんまでを、5~6名 の中学生がひとつの農家にお世話になり、農作業の準備の手伝 い・田植えなどの農作業・昼食・夕食づくりの手伝いなどを行 うものでした。中学生たちは、農家の方々と涙を流して、抱き 合って別れました。 「米は大切だ」「もう、これからは残さない」「米には5人の 神さまがいると聞いていたけど、もっと多くの神さまがいる」 と、みんなが農家とのふれあいや農業体験を「よかった」とい いました。行く前はほとんどの生徒が「どうして京都じゃなく て秋田なの?」と不満を持っていたのですが、行ったあとは 「秋田で良かった」とほとんどの生徒が答えていました。

 このように、農業の体験は様々な意識の変化を促します。その 場合の「農業体験」は「農作業をする」以外にも「農家のたた ずまいの中ですごすこと」「農家の方とのふれあい」などが重 要な要素となっています。 「農家のおじさん」が「いろんなことを知っていて、俺たちが やっと出来たことを簡単にやってのける、すごいおじさん」に 変化します。 田んぼで風に揺れる植えたばかりの苗を見て、「倒れないでが んばっている」と思います。 ご飯を食べるとき「あのおじさんが作った米だから残さない」 と思い、買ったお米を食べるときにも、作った人のことを思う ことが出来るようになります。

 このような意識の変化ができるには、ある程度の時間と空間が 必要です。

 この棚田オーナーの取り組みは、それまで縁のなかった都会の 人間と地方の農家の人間の出会いを作った第一歩だと思います。 先人の遺産である棚田を守ることにもつながります。 さらに発展することを願っています。 増穂町の皆様、NPO畑の教室の関係者の皆様、ありがとうござ いました。 さ、今日の朝食も、ほかほかの棚田の新米です。しあわせ!